Vol.5 結いが育む郷土の原風景 ~岩手県編~

分割再生&解説ハンドブック Part 3 結いの精神

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胆沢の農文化の歴史、また胆沢に伝わる「結いの精神」についてご紹介しています。

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結いについて

・柳田國男が「最初の生産組合」として注目した「ユイ」

柳田國男といえば、「遠野物語」など、広く日本の民話などを収集し、日本民俗学を確立した民俗学者として有名ですが、もともとは東京帝国大学(現在の東大)法学部を卒業し、農商務省・法制局、最後は貴族院の書記官長をも務めた、バリバリのキャリア官僚。
しかし、最初に農商務省農務局農政課に配属され、全国の農村を歩いて回ったことをきっかけに、農業に深い関心を持ち、農政や農業史の分野でも、さまざまな著作や研究成果を残しています。
その彼が、昭和2年に発表した「農民史研究の一部」という著作の中で「最初の生産組合」として注目したのが「ユイ」でした。
もともと農家は、大家族のため、労働力は豊かで、大概のことは一家だけで行うことができました。しかしそれでも、田植えや収穫など、さらに多くの労働力を必要とするときがあります。こうしたときに、複数の農家が、お互いに助け合うシステム、それが「ユイ」だと柳田國男はいいます。さらにこうしたシステムを持っていない農村は全国に1カ所もなかったと、各地で彼自身が収集した、ユイの呼び方を合計44カ所もあげて証明しています。
その例をいくつか、ここで引用してみましょう。

  • 岩手県 「ユイコ」
  • 羽後 田沢辺 (秋田県田沢湖あたりか)「ユエスル」
  • 陸前 登米郡 (現在の宮城県登米市) 「ユイ」
  • 陸前 栗原郡 (現在の宮城県栗原市) 「ユエ」「ヨエ」
  • 飛騨 吉城郡 (現在の岐阜県飛騨市) 「ユウシゴト」「ユウガエシ」
  • 秋田県 大館 「ヨイスル」
  • 陸前 気仙郡 (岩手県 大船渡市・陸前高田市・釜石市)「ヨイトリ」「ヨイカエス」
  • 岩手県 遠野 「エエ」「エエトリ」
  • 富山県 「エ」
  • 奄美大島 「エエスル」
  • 鹿児島県 「イイスル」

つまり「ユイ」は各地方で個別に発達した特別な風習ではなく、農家なら日本全国にどこにでもある、普通で、しかも農家にとってなくてはならない、重要な生産システムだったというのです。
さらに柳田國男は、こうしたシステムは決して農家だけでなく、漁業を営む漁村、狩りや林業を営む山村などにも、残っていたと推測しています。その根拠としてあげているのが「ユイ」あるいは「田結」など「ユイ」のつく浜辺。たとえば神奈川県の「由比ヶ浜」や、桜エビで有名な静岡県清水市の「由比町」や兵庫県豊岡市「田結」など、こうした海岸では人々が共同で網を引くなどの作業を行っていたのではないか、そしてその共同組織もまた、「ユイ」と呼ばれていたのではないか?彼の想像はさらに膨らんでいくのです。
しかし、農村部にとって、ひじょうに重要なシステムである「ユイ」も、この文章が書かれた昭和2年の時点でさえ、都市部で近代的な経済活動をしている人々からは、まったく理解されず、またすでに農村部でも形が衰えていると、柳田國男は嘆いています。だからこそ、こうした農村の知恵の歴史の上に立って、新しい組合制が必要だと訴えてもいるのです。

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