富山県

06.悠久の時を刻む越中和紙と子どもたち

紙漉きに挑戦する地元の子どもたち

Vol.29

Ep.06

奈良時代の古文書「正倉院文書」にも登場する古い起源をもつ越中和紙。八尾(やつお)和紙、五箇山(ごかやま)和紙、蛭谷(びるだん)和紙の三つを総称したものです。八尾和紙は江戸時代に薬袋紙として、蛭谷和紙は書画用紙として、そして五箇山和紙は加賀藩で使われる紙や神社の障子紙などで発展しました。

本作で紹介している悠久紙(ゆうきゅうし)は五箇山和紙の伝統を色濃く受け継いでいます。自家製の楮(こうぞ)と糊(のり)のみを使って漉き上げる伝統製法の紙は、桂離宮や名古屋城など、国内外の名だたる文化財の修復用紙としても使われています。経年で黄ばむことのないその紙は“千年もつといわれ”、実際100年前に使用された帳面類をもとに「大福帳」が復刻されました。

着色紙はすべて五箇山で採れる天然染料を用いた草木染めで、優しい風合いです。平家の落人伝説もある五箇山は「五つの谷間(やま)」がその名の由来とされ、江戸時代には和紙だけでなく火薬の原料である硝煙も生産するなど、藩にとっても重要な財源となる隠れ里でした。