群馬県

02.養蚕農家の一年。おかいこさんの一生

蚕に桑の葉を与える様子1

Vol.03

Ep.02

本作に登場する養蚕農家は1年に4度、蚕(かいこ)を飼育しています。蚕のエサとなる桑の葉が収穫できるのは5月から10月まで。養蚕農家はできるだけ新鮮な葉を蚕に与え続け、大切に育てます。

蚕はカイコガという蛾の一種ですが、実はカイコガの野生種はもう存在しません(日本に自生する天蚕あるいはヤマ繭とよばれる蛾は分類学上別種のヤママユガ)。蚕の幼虫は足の力がとても弱く、木にしっかりとつかまることもできなければ、エサとなる葉を探して長距離を移動することもできません。養蚕農家が日に何度も桑の葉を与え、繁殖の手伝いや繭をつくる手助けをしてあげなければ、1日も生きることのできない弱い生き物なのです。仮に成虫になっても羽が退化しているため、飛ぶことすらかないません。

だからこそ、昔から養蚕農家は蚕のことを大切に育て、「おかいこさん」あるいは「おかいこさま」と呼び、自分たちは空っ風が吹き込む1階で寝起きし、蚕は暖かくて湿気が少なく快適な2階部分で飼っていたのです。