新潟県

05.十日町のそば、「千年の市じろばた」のそばいなり

じろ(囲炉裏)を囲むだんらんの時間を

Vol.30

Ep.05

農家の女性たちによる直売所「千年の市じろばた」。そのスタートはJA女性部のメンバーが野菜を持ち寄り、テント下で始めた小さなお店でした。当初は夏だけのテント市でしたが、「自分たちの店を持ちたい」という思いが結実して開店へ。店名の「じろばた」は地元の言葉で囲炉裏端。じろを囲んで茶飲み話ができるような、誰でも気楽に立ち寄れるお店にしたいという願いが「じろばた」には込められています。

じろばたの名物は、特産のそばを油揚げの中に詰めた「そばいなり」。新潟名物として知られる「へぎそば」は、つなぎに海藻の布海苔(ふのり)を使った風味と歯ごたえ、喉越しが特徴です。

かつて越後縮という麻織物で栄えた十日町では、そばの茎を燃やして作るアク汁で糸を漂白し、糸に張りを持たせる糊づけには布海苔が用いられました。「へぎ」と呼ばれる器に八の字型の一口サイズでそばを盛りつける形は、「おかぜ」と呼ばれる絹糸の束をイメージしたもの。ふるさとの歴史が織り込まれた郷土食です。