石川県

10.春のあえのこと。豊作を願う人々の祈り、ふるさとへの思い

春の「あえのこと」

Vol.01

Ep.10

能登に伝わる「あえのこと」のような田の神、山の神、年の神などを祀る農耕儀礼は各地にあります。元々は先祖が近くの山に登って神になったとされる祖霊神が、田植えの時期に田んぼに降りてきて田の神となり、収穫期まで田を守るという信仰です。稲刈りが終わると祖霊神は再び山に帰り、山の神に。そして年が改まる大晦日、年の神となって人々のところに戻り、年が明けると再び山に帰るというサイクルを繰り返すというものです。

あえのことは、稲作に従事してきた日本人の生活文化を色濃く残す伝統行事で、その家の主人が中心となってとり行い、目に見えない田の神があたかもそこに実在するかのようにふるまいます。暮れの「あえのこと」で家に迎え入れた田の神を、耕作前の2月に再び風呂に入れたり食事を供したりして家から送り出し、豊作を祈願するのが春のあえのことです。能登の人々はこうした農耕儀礼を通じて、ふるさとの伝統行事を大切に敬い、守り続けてきました。