山形県
02.王祇祭、当屋と合力。春を告げるタケノコと郷土料理の孟宗汁
Vol.16
Ep.02
一般に「黒川能」と呼ばれるのは、鶴岡市黒川にある春日神社(807年創建)の王祇祭(おうぎさい)で演じられる能のこと。旧正月にあたる2月1日の未明に春日明神の依り代である王祇様を迎え、上座(かみざ)と下座(しもざ)に分かれてそれぞれ舞台を設け、夜を徹して能や狂言を行います。翌2日の朝には王祇様が神社に還り、夕方にかけて舞台造りの拝殿で上下両座立合の能が奉納されます。
この王祇祭の準備や執行、後始末など一切の世話をする人が「当屋(とうや)」。この家は一年を通じて大変な負担となるため、親戚や集落の人々がみんなで助け合う「合力(ごうりき)」というこの地方独特の仕組みがあります。「黒川のせがれに生まれた限りは、健康でいずれ長老となり、王祇様を家に迎えいれたい(当屋にあたりたい)」とは、地元の人が誰しも口にすること。
そして5月の連休明け、孟宗竹(もうそうちく)産地の北限として日本で一番最後にタケノコが収穫される庄内地方では、郷土料理の孟宗汁がふるまわれます。