山形県

07.黒川能について④(大地踏、式三番、公儀の翁、所仏則の翁など)

稚児による大地踏

Vol.16

Ep.07

稚児による「大地踏」で始まる黒川能は、式三番(しきさんば)に続いて能五番、狂言四番が夜を徹して演じられます。中でも「翁(おきな)」は猿楽の能に古くから伝わる祭儀的な演目・式三番の1つで、祭事の始めに演じられるものですが、黒川能の特徴はこの翁に「公儀の翁」と「所仏則(ところぶっそく)の翁」の2種類があること。

公儀の翁は能太夫(座長)が舞い、王祇祭以外の祭りでも演じられますが、所仏則の翁は、上座の翁太夫である釼持(けんもつ)源三郎家に一子相伝で伝わるもので、この家の者しか舞うことが許されません。所仏則の翁は黒川にしかない独特のもので、王祇祭以外ではいかなる場合にも行われず、櫛引町史「黒川能史編」では、「能が始まる以前にも芸能があったが、能楽が入ってきてその時に創造されたもので、前からあった芸能と完全に絶縁するに至らず、在所においてのみ演じる仏式の能という意味で“所仏則”と呼ばれたのでは」と分析していますが、正確な由来はわかっていません。