Vol.7 中国山地に受け継がれる歴史と伝統の息吹 ―広島県―

瀬戸内海の穏やかなイメージが強い広島県ですが、実際には傾斜地である中山間地域(山間部とそれに準じる地域)が全面積の76%という、平地の少ない地域です。こうした不利な条件のなかにあっても、人々は様々な知恵で農業に取り組むとともに、いにしえからの伝統や文化を守り続けています。

Part 1 プロローグ そして三次・江の川と三江線(2分49秒)
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0:00~1:48 プロローグ~霧の三次~タイトル
1:48~2:49 霧の街「三次」とそこに流れる「江の川」と「三江線」
そして三次・江の川と三江線

今回、広島県編で取り上げるのは、広島県北東部。地勢的・文化的には島根や出雲など山陰地方とのつながりが強い三次市、安芸高田市、北広島町が中心です。 広島県は、広島市や尾道市、福山市といった瀬戸内海沿岸部にある都市イメージが強いためか、県全体の面積のうち、75%以上が、山間地とそれに準じる傾斜地で構成された「中山間地域」であることはあまり知られていません。2000mを越えるような高山こそありませんが、平地が少ないという面では、広島県は日本有数の山間地といっても過言ではないのです。 今回ご紹介する地域は、まさに中国山地を中心とし、ほぼすべてのエリアが「傾斜地」に分類されるという典型的な中山間地域。 平地に比べ、悪条件が重なるこうした傾斜地でも、人々は脈々と農業を営んできました。 むしろこうした不利な条件が人々の結びつきを強め、また様々な技術や知恵を生み、そして様々な文化を育んでいくことになります。 その典型的な例が「はやし田」や「神楽」といった、農業ときわめて結びつきの強い伝統行事の数々。特に「神楽」は、伝統芸能というよりも現代の新たな大衆芸能として地域の人々に愛されています。

そして三次・江の川と三江線

県北の代表的な都市の一つが、霧の街としても知られる三次です。 夏から秋まで、街を覆い尽くす霧を生み出すのが、この街のもう一つの風景を作っている江の川です。江の川は「中国太郎」とも呼ばれる中国地方最大の川。 北広島町を源流に中国山地の山陽側を流れてきた江の川は、ここ三次市内で馬洗川・西城川・神之瀬川という3本の川と合流。ここから進路を山陰側に変えて、中国山地を横断し、島根県江津市で日本海に注ぎます。古代から、鉄道などの交通網が発達する昭和の時代まで、山陰側と山陽側を結ぶ重要な「川の道」となっていたのが、この江の川です。

そして三次・江の川と三江線

現在、この江の川に沿って広島県の三次市と島根県の江津市を結んでいるのが、JR三江線です。この鉄道は、1930年に計画された時点では、それまで山陰と山陽側を結ぶ重要な交通路であった江の川の河川交通に変わる幹線として、期待された路線でした。しかし全線開通したのが、すでに「車社会」となっていた1975年。そのせいか、完成直後から存続を危ぶむ声もあったといいます。 しかし、7回も江の川を渡りながらその流域を走る三江線は、車内からも沿線の駅からも江の川の美しい風景を楽しむことができます。風光明媚な鉄道の旅を存分に楽しめるローカル線でもあるのです。

Part2 神楽の舞い(6分48秒)
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2:49~3:51 農家を営む津田さんインタビュー
3:51~5:07 神幸神楽団 練習風景
5:07~6:24 神幸神楽団 インタビュー
6:24~9:37 吉和神楽競演大会(廿日市市)
神楽の舞い

江の川流域は、出雲地方などと並んで、もともと大陸に近いために、その文化や文明の影響を受けた地域です。また、良質な砂鉄が流域でとれることから、すでに古墳時代から鉄生産が行われていました。こうした独自の地理的背景と文化的な背景をもつこの地域には、その後も様々な文化が生まれ、また継承されてきました。

神楽の舞い

そのうちの1つが「神楽」です。 「神楽」は自然や神に対する感謝の踊りとして、神社の祭礼を中心に今も各地で行われていますが、江の川流域で生まれ、現在広島県北(備北)地域とそれに隣接する島根県石見地域で続く神楽は、少し違います。日本各地の神楽は、失われつつある伝統文化として、あるいは祭礼のための特別な儀式として、特別な保存の努力によって存続しているものが多いのですが、この地域の神楽は、伝統芸能という枠組みを残しながら、さらに現在も進化し続ける「大衆芸能」として、生き続けているのです。

神楽の舞い

こうした神楽を支えているのは、プロの劇団ではありません。地元の人々が、各集落ごとに集まって結成している神楽団が、その主役。地域の人々に代々伝えられ、支えられ、神楽という文化が今もしっかり根付いているのです。
ここで紹介している安芸高田市の美土里町「神幸神楽団」に所属する津田さんも、こうした神楽を支える一人。祖父、父から家業の農業を次ぐだけなく、神楽の舞をも受け継いでいるのです。 また、このパートでは、吉和神楽競演大会(廿日市市)の模様と、この大会に向けて練習をする神幸神楽団の様子、また所属するメンバーの方々へのインタビューがご覧いただけます。 この地方の神楽について、詳しくは関連記事で解説しています。

Part3 田植えを一大イベントにしてしまった農民の知恵、新庄の「はやし田」 (2分16秒)
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9:37~10:20 新庄のはやし田
10:20~11:53 大花田植
新庄の「はやし田」

国の重要無形文化財に指定されている「安芸のはやし田」。笛や太鼓、手打ち鉦をバックに歌われる「田植歌」にあわせて、絣の衣装を着た早乙女が田植えを行う民族芸能として、北広島町や安芸高田市の各保存会によって保存されています。もともとは、農業の機械化が進む以前、備北地域や島根県で広く行われていた、伝統的な田植えの方法です。

新庄の「はやし田」

「はやし田」は別名「大田植」ともいい、とくに地域で規模の大きい田んぼや、有力者や神社の神田など、その土地総出で田植えをしたことに由来します。 こうした田植えは、昔から1日で終えることが決められており、農家の人々は、田植え当日にやらなければならない様々な作業工程が無事終えられるように、知恵をしぼって一つのシステムを作り上げます。それが「はやし田」でした。

新庄の「はやし田」

このパートでは、北広島町新庄郷土芸術保存会のみなさんの練習風景と、実際に5月上旬に行われる田植えの様子がご覧いただけます。

「はやし田」にかんしては「関連情報」で詳しく解説しています。

Part4 三次の夏の夜(4分24秒)
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11:53~12:19
12:19~12:55 夏の夜の風物詩・夜鵜飼
12:55~14:43 三次物怪まつり
14:43~15:08 広島県歴史民俗資料館 主任学芸員平川さんへのインタビュー
15:08~16:17 稲生平太郎の子孫にあたる平太郎さんの妻、 稲生小菊さんへのインタビュー
三次の夏の夜

三次の夏の風物詩の1つ、夜鵜飼。鵜飼は、鵜匠たちよる伝統漁法です。 毎年6月1日~8月31日までの期間行われており、並走する遊覧船からは、その様子を間近で見ることができます。

三次の夏の夜

同じく三次の夏の夜の風物詩として知られているのが、三次物怪まつり。このときに行われる仮装妖怪百鬼夜行では、三次に伝わる「稲生物怪物語」のストーリーをもとに、参加者たちがそれぞれ妖怪に扮して夜の町を練り歩きます。 この元となっている「稲生物怪物語」とは、江戸時代の三次を舞台に作られた妖怪物語。物語に出てくる場所が明確なことや、主人公が実在の人物だったことなどから、かつての屋敷跡には今でも石碑が残っています。

三次の夏の夜

このパートでは三次の夏の風物詩とともに、「稲生物怪物語」の主人公の子孫にあたる稲生平太郎さんの妻、稲生小菊さんのインタビューなどもご覧いただけます。

Part5 黒い真珠 ピオーネ(2分35秒)
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16:17~16:36 三次盆地の残暑
16:36~18:52 三次ピオーネの収穫と、三次ピオーネ生産組合 組合長 西田数馬さんへのインタビュー
黒い真珠 ピオーネ

「黒い真珠」と呼ばれるブドウ、ピオーネ。 三次ではちょうどこのブドウが色づく頃に、昼夜の気温差が大きくなる時期となります。その気候が幸いして、色づきがよく糖度の高い、まるで黒い真珠のような果実が連なった高品質の「三次ピオーネ」ができあがるのです。

黒い真珠 ピオーネ

現在このピオーネは、自立経営の確立をめざす生産者たちが1974年に設立した「三次ピオーネ生産組合」の様々な取り組みの成果もあって、ギフトとしても最高級のブランド品として認知されるようになりました。 このパートでは、三次盆地の残暑の風景と、三次ピオーネの収穫や出荷の様子がご覧いただけます。

Part6 三次 秋の風景(3分36秒)
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18:52~19:29 三次・霧の海
19:29~20:00 香淀の大イチョウ
20:00~20:24 神幸神社
20:24~22:00 神幸神楽団の上演
22:00~22:29 神幸神楽団 津田さんインタビュー
三次 秋の風景

三次は、四方を山に囲まれ、三つの川が流れる盆地です。そのため秋になると川の蒸気が霧となって、まるで海のように立ち込めます。それが、三次名物「霧の海」。 三次ならではの秋の風物詩でもあり、展望台からはその幻想的な光景を一望できます。

三次 秋の風景

「香淀の大イチョウ」は、香淀迦具(こうよどかぐ)神社の境内にある大樹。ラッパ状の葉をつけることで知られ、秋の紅葉の時期には、写真撮影に訪れる人も多くみられます。

三次 秋の風景

またこの時期、神幸神社では、神幸神楽団による秋祭りの公演が行われます。長時間に及ぶ伝統行事ですが、近年、後継者不足が課題です。

それぞれの三次の秋の風景を、映像でご覧ください。

Part7 山間部のごちそう、ワニ(3分51秒)
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22:29~23:08 郷土料理 ワニ
23:08~23:28 広島菜
23:28~26:20 ワニ料理
山間部のごちそう、ワニ

三次の郷土料理、ワニ。 この地でいわれる「ワニ」とは、爬虫類のワニではなく、鮫のことを指します。 広島県のなかでも山間部に位置する三次では、冷蔵技術が未発達だった時代は魚を口にすることが珍しく、そのため保存のきくワニの身は、山間部でも食べられる魚として重宝されました。

山間部のごちそう、ワニ

ワニは刺身としての食べ方が一般的でしたが、現在は映像でもご紹介しているように、ワニの漬菜巻き、揚げワニ、みぞれ和え、ワニの炊きこみご飯、秋ナスとなばの炒り煮など、様々な食べ方で人々に親しまれています。

Part8 本郷神楽祭り(1分10秒)
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26:20~27:30 神楽門前湯治村・神楽ドームの本郷神楽祭り
本郷神楽祭り

「本郷神楽祭り」とは、神楽シーズンの最後にあたる太刀納めとなる行事で、本郷地区にある4つの神楽団が参加しています。

本郷神楽祭り

この祭りが開催されるのが、神楽門前湯治村の神楽ドーム。東京ドームと同じ幕を張っていることでも知られる湯治村のメイン施設で、1998年にオープンしました。 人々は大会中、館内の升席に毛布などを持ち込んで、神楽観賞を楽しみます。

このパートでは、本郷神楽祭りの上演の様子をご覧いただけます。

Part9 中山間地域に受け継がれる、伝統文化と豊かな農村景観(2分40秒)
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27:30~28:01 中山間地域
28:01~28:20 島根県中山間地域研究センター 研究企画監 藤山浩さんインタビュー
28:20~30:10 エンディング
中山間地域に受け継がれる、伝統文化と豊かな農村景観

今回の広島県編で紹介してきた地域を含め、日本の中山間地域で進んでいる過疎と高齢化。長年培ってきた農村景観や伝統行事、文化などが失われることが、懸念されています。

中山間地域に受け継がれる、伝統文化と豊かな農村景観

このパートでは、中山間地域の価値と役割について研究をしている島根県中山間地域研究センターの専門家に話を伺いました。

マップ

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