千葉県

01.南房総の花畑、早春の花摘み

観光農園のお花畑1

Vol.08

Ep.01

早春になると千葉県南房総の花畑では、菜の花、キンセンカ、百日草、金魚草、ストック、水仙など、色鮮やかな花々が咲き誇ります。かつては男たちが漁に出て、女性がわずかな畑仕事をしながら魚の荷揚げを手伝う半農半漁の暮らしが主だったこの地で、花の出荷が始まったのは1920年代のこと。関東大震災で東京は焼け野原となるも、震災慰霊祭のために花の注文が急増し、南房総の花畑も増えていきました。

しかし、戦争が始まると食糧増産のために花は禁止作物に。花の苗は抜き取られてイモ畑や麦畑になり、種も球根もすべて焼却せよとの指令が下ります。しかし南房総の人々は、花畑から掘り出した球根を捨てるふりをして山奥の杉林にこっそり隠したり、鍋の中に入れておくなどして、捨てずに保管していました。

戦後、一つ残らず絶えたと思われた球根や種は、こうした花を愛する人たちの手によって守られ、南房総では再び花が作られるように。その歴史が今にいたっています。