長野県
06.信州のごちそう、新蕎麦の季節
Vol.15
Ep.06
古墳時代以前から食されてきた蕎麦。しかし現在のように麺として食べられるようになったのは室町時代からで、長い蕎麦栽培の歴史から見ると案外最近のことです。当時は蕎麦の実の殻を取ったあとアワやヒエなどの雑穀と炊いて粥のようにして食べるか、簡単につぶして団子や餅状にこねたものを焼いたり汁の中に入れたりしていました。
麺状の蕎麦を表す「切り蕎麦」という言葉が歴史上の記録に現れるのは、信州木曽にある臨済宗・定勝寺で1574年に行われた改修工事の折、寺が切り蕎麦をふるまったというもの。手打ち蕎麦の製造工程を考えれば、製粉→打ち→切り→茹でと、きわめて手間のかかる料理です。だからこそ麺としての蕎麦は農村部において特別な料理と位置づけられ、信州や甲州では、冠婚葬祭などのもてなし料理として食事の最後に蕎麦やうどんを出す風習がありました。現在でも正月や小正月、折々の節句などに蕎麦を打つ地域も多く残っています。