島根県

03.伝統的景観の築地松をまもる陰手刈りの技

築地松

Vol.13

Ep.03

出雲平野の散居集落の風景を印象的にしているのが「築地松(ついじまつ)」と呼ばれる屋敷林。この地方の豪族が洪水時の浸水を防ぐため、敷地の高さを数メートル高くして屋敷周りに土居(築地)を築き、それを固めるため水に強い松や竹を植えたのが始まりといわれます。出雲平野の築地松は、春から夏にかけては緑一色の水田、秋には黄金の穂波、そして冬には真っ白い雪景色と、四季を通じてまわりの風景に溶け込み、絵画のような美しさを生み出します。屋敷の西側と北側に植えられた黒松が一定の高さに刈り整えられた姿はまさに造形美。これを維持する「陰手刈り(のうてごり)」は、4~5年に一度築地松を剪定することで、田畑や屋敷に日陰が生じるのを防いで風通しを良くし、倒木を防いだり松くい虫から木を守ったりする作業です。陰手刈りによってすっきり透かれた築地松の枝葉は、まるでレースのカーテンのよう。地元では定期的に研修や講習会などを行い、陰手刈り職人の育成にも努めています。