東京都

02.「玉ひで」の親子丼としゃも鍋

玉ひでの親子丼

Vol.36

Ep.2

「玉ひで」の創業は江戸中期の1760年。将軍家に仕える御鷹匠を務め庖丁式という儀式で鶴を切るお役目だった玉ひで初代の鐵右衞門(てつえもん)が、副業として始めた料理屋が起源です。

玉ひで三代目の時代にしゃも鍋専門店として通年営業を始め、戦時中の空襲で店が消失して以降は昼は弁当、夜は鳥のすき焼きという形態に。親子丼の誕生は1891年、しゃも鍋を食べていた客が鍋の残りに生卵を入れて卵とじにしていたのをヒントに、玉ひで五代目女将が考案しました。しかし当時は「汁かけの丼物を売ると店の格が落ちる」という懸念から出前専用の料理とし、「店では一切出さないように」と厳命。玉ひで六代目もその遺言を守り続けたそうです。その後、出前や仕出しで評判を呼び、人気の看板メニューに。

しかし玉ひでの原点はあくまでもしゃも鍋で、使われる割り下は砂糖を一切使わずみりんと醤油だけ。とりわけみりんはかつて安定的に仕入れるのが困難な貴重品でしたが、徳川家御用達だった玉ひででは年中手に入れることができたため、今に続く伝統の味が生み出されたといいます。