愛媛県

01.宇和島の闘牛と九島

宇和島市営闘牛場

Vol.11

Ep.01

愛媛県南予地方の闘牛は17世紀後半、遭難したオランダ船を地元漁民が救助し、その返礼として贈られた2頭の牛が格闘したことから始まった、との口伝があります。一方、鎌倉時代に農民が農耕用の強い和牛を育成しようと、野原で牛の角を突きあわせた、との説も。安政3年(1856年)には「近頃牛突合せ繁々相催し互いに勝負を争い候趣」といった文書も残されており、興行化した闘牛に人々が熱中していた様子がうかがえます。大正から昭和にかけて市民の身近な娯楽として最盛期を迎え、代表的な闘牛場のほかにも、簡素な竹柵を設置した「突きあい駄場(だば)」と呼ばれる施設が谷ごとに設けられていたとか。

やがて獅子文六の小説『てんやわんや』や、西宮球場への宇和島闘牛の遠征興行をフィクション化した井上靖の『闘牛』などによって、その知名度は全国区に。一時は後継者不足で陰りを見せますが、宇和島観光闘牛協会の発足や全国闘牛大会の開催など、地元を挙げて保存継承に取り組み、平成7年には国の無形民俗文化財にも選定されています。