熊本県

10.農産物としての畳表。イグサのこれから

イグサの苗の植え付け

Vol.10

Ep.10

イグサの歴史は古く、古墳時代にまで遡ります。この時代の遺跡からすでにイグサと思われる素材でできた遺物が出土しています。飛鳥時代に定められた大宝律令では、下級役人の履き物として鞋(くつ)が定められており、これはイグサで編まれた草鞋(わらじ)のような物。また、雅楽の舞踊では糸鞋(しがい)という履き物を使用しますが、これも靴底にイグサを編んでいます。麻などの繊維と違い、イグサは強くしなやかに体を包む素材として重宝されていたのかもしれません。

やがて座布団や筵(むしろ)の芯材、表装として使われるようになり、今でも正倉院や国立博物館の収蔵物として残されています。それが寝具として貴族の間で使用され、現在の畳へと進化していきます。

とはいえイグサの歴史上、奈良や平安時代にはまだ畳のような大きな品を持てるのはごく一部の宮廷貴族だけ。それも現在のように部屋中に敷き詰めるのではなく、室内の一部の寝る場所にだけ敷く形でした。